「お待たせしました、夕飯の時間ですよ」――。午後6時、食事を待つ特別養護老人ホーム入居者のもとへ、高校生たちが慣れた手つきでキビキビと配膳を始めた。介護福祉士やヘルパーなど専門資格を持たないため、おもに配膳・下膳、お茶出しや簡単な洗い物、傾聴などを担当。職員らをサポートする介護補助員として勤務している。
食事時は特に人の手が欲しい時間帯。介助や服薬管理など介護士が専門作業に専念できるよう、環境を整えるのが一番の仕事だ。近年では、無資格未経験でも介護業界で働ける新たな職種として導入を進める施設が増えている。
今夏から働き始めた進藤綾音さん(三浦臨海高3年)は、介護現場で働く家族の影響で興味を持っていたところ、募集を知ったという。
「楽しそう。こういう仕事をしてみたい」と叩いた介護業界の扉。アルバイトでも入居者の生活を預かる責任など「大変なことはあるけれど、お年寄りと交流できることがとても楽しい」という。2時間と短い勤務だが、入居者も若者たちとの会話を心待ちにしているようで、「繁忙な時間に人手が増えることはもとより、雰囲気に明るさが出る。孫のように親しみやすい関係が空気を和やかにしてくれるのでは」と施設管理者は嬉しい相乗効果を話した。
来年4月から同施設の正職員として採用が決まっている進藤さん。勤務サイクルの把握や人間関係の構築などがすでに出来ていることから、「スムーズに現場へ出やすい」と自信をのぞかせる。
また、看護師を志しているという塙雪乃さん(同3年)は、「介護の知識も必要になると思う。実際に働いてみることは、とてもいい勉強になる」。実践的なインターンシップ(職業体験)の役割も果たしているようだ。